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日本の再生は、住民自治・年輪型成長で自然と人間を優先

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序 章HEADLINE

 経済・社会・政治の仕組みを変える

アベノミクスと先の見えぬ時代 − 穏和で開かれた保守を


 政権交代に失望した国民は、昨年の衆院選で欧米型リベラル・社会民主主義から離れ、「強い日本」の保守と維新・みんなのような新自由主義を共有する党しか選択できなかった。それは、今年の都議選・参議院選でも変わっていない。

 民主党の未来は、旧社会党から社民党へと同じ軌跡を辿るだろう。また維新は、慰安婦問題で支持が収縮した。これと連携を図っていたみんなも、新自由主義を軸にし政治的な対抗軸にはなり得ない。

 さらに「オリーブの木」のような連携で、他の野党が政権を担うことも期待できない。その根っこには、脱亜入欧と対米従属の日本社会があるのではないだろうか。

 得票を減らして、政権の座に戻った自公政府は、アベノミクスで円安・株高を導いた。そして消費増税と法人減税、原発再稼働と汚染水、TPP交渉合意、領土外交と沖縄・北朝鮮対応、集団安全保障解釈変更など、盲進が続く。
 
 だがデフレ不況脱却の三つの矢は、金融緩和・財政出動・規制緩和と市場開放で、ケインズ政策と新自由主義の抱き合わせでしかない。また内外政策は、維新からの成功神話と敗戦、戦後の成長神話と失われた20年、この表裏の歴史から何も学んでいない。

 欧米の政権交代は、保守とリベラル、小さな政府と大きな政府、新自由主義とケインズ政策の対抗が基軸だ。民主党の政策ー「第三の道」も、これを共有している。

 日本は、脱亜入欧と対米従属による、保守とリベラルー社会民主主義型の欧米模倣を脱け出さねば未来は開けない。「強い日本」に代わり、住民自治と地域主権を基軸に、穏和でアジアに開かれた保守ー「自治党」の結成が求められている。

 閉塞の根源は、技術文明の高い生産力と市場のグローバル化

 フロンティアーを開拓し、フォード・システムで覇権を築いたアメリカ。リーマン・ショックの下で登場し再選されたオバマは、「財政の崖」・シリアの先に不透明感が漂う。

 独仏主導で統合の道を歩んだ欧州。ユーロ不安が、EUを覆って、出口も見えていない。

 脱亜入欧で「先進国」に仲間入りし、敗戦後は技術・貿易立国の日本。だがイジメや体罰で子どもが自殺する教育。働く場を得られぬ若者と、過重労働のブラック企業。失われた20年に、消費増税に法人減税を貼りつける知恵しか無い日本。 

 米欧日いずれも、かっての栄光は色褪せ、雇用と家計の収縮、財政危機と通貨不安に喘いでいる。

 グローバル化は、ドルの変動相場制移行から始まった。これを、どう捉えるのか。社会主義は、70年で崩壊した。資本主義も、200年で「歴史の崖」に直面している。

 世界は米欧を始め、財政破綻と金融緩和から脱け出せず、ケインズ政策の限界は明らかだ。また新自由主義は、規制緩和・市場開放で国内の産業と経済を崩壊させ、雇用と所得が収縮して中間層が没落し、海外移転企業も先行きの不安を抱えている。

 そこでは理念と政策の貧困、即ち新自由主義とグローバル化、ケインズ政策と集権体制から脱け出す変革モデルを欠いているのだ。グローバル化は冷戦終了後というが、大航海時代に始まり産業革命が推し進めた、技術文明の到達点でもある。

 今、家電を始め多くの産業が国際競争力を失っている。企業が安い賃金を求めて海外に出て行き、働き口は尻すぼみだ。この流れを止めないと、仕事と暮らしの好循環は生まれず、貧困が再生産される。 

 デフレ不況は、従来型のインフレ・デフレと違う。そこでは、低価格・低コストの国際競争により、企業収益と家計所得が背反し、雇用と内需が縮小する負の循環に陥っている。

 また変動相場制で、実体経済と貨幣経済が分断され、為替市場を軸に金融バブルが繰り返されている。その根っこでは、技術文明の高い生産力が市場のグローバル化を求め、ヒト・モノ・カネの仕組みを歪めているのだ。

 地球温暖化と異常気象、原発震災、タイの洪水とグローバル・サプライ・チェーン。その基底にある、技術文明の高い生産力と市場の海外傾斜。人類は、この仕組みを変革する、歴史の転機に立っているのではないだろうか。

 さらに少子高齢化・人口減は、雇用と所得が収縮し中間層が崩壊する貧困に起因し、働く人の資質・技能の劣化につながっている。その解決には、山上憶良の「子を宝に」位置づけ、量と質を併せて、働き方と暮らし方の変革ー自然と人間の復権が必要だ。

 加えて日本社会の歪みの根っこには、脱亜入欧と対米従属がある。アジア儒教文化圏における日本の独自性、稲作農耕文化とイエ家族・ムラ共同体、地方自治の価値規範など、その立ち位置を明確にすることが、閉塞した外交や経済に道を開く。 
 
 いけ好かない美人の話と稲盛和夫の日航再建

 ここで以前、リーマンショックの折り、知人から聞いた話を紹介したい。
 出産前まで証券会社で働き、バブル期にはボーナスが、建売り住宅会社に勤める夫を大きく上回ったという「いけ好かない美人」がいた。ところが金融危機で、頼りにしていた夫の収入は半減した。

 彼女は、生活を見直し、家庭菜園でハーブの栽培を始める。これをアイディア商品にして販売し、以前にはできなかった貯金が月二万円になった。私の知人は、このライフスタイル・チェンジで、彼女を見直したと言う。

 日本再生の打開策は、地域の資源と住民の知恵と力を、活かし・つなぐ、住民自治・地域主権社会の構築しかない。

 日航再建で、稲盛和夫のリーダー論は、「ビジョン、組織での共有、人間性・同じベクトル、仕組み作り」の四点セットだ(12.10.31.,日経)。これに学び、三つの下支えで経済・社会・政治の仕組みを変える、住民自治・年輪型成長の日本モデルを提起したい。

 新自由主義は、規模の利益と比較優位を基に、規制緩和と市場開放で競争を推進してきた。またケインズ政策は、政府による富の再分配を軸に、マクロ経済を管理しセーフティーネット設けて競争に対応してきた。

 これまで資本主義の利潤追求と競争原理に対し、社会民主主義の側からは格差是正や分かち合いを政府の役割としている。それらに代替する理念が、私が提起する下支えだ。

 私は、アダム・スミスの分業の利益ー熟練・移動距離短縮・技術進歩を原点に、『諸国民の富』の「見えざる手」を国民経済を下支えする政策価格と捉える。

 それを軸とする関税・為替のボーダー再構築が、経済・社会の好循環と懐の深い市場を築き、住民自治・年輪型成長の日本モデルに導くのだ。

 こうした下支え理念のルーツは、戦後間もない頃の旧制中学同窓会における恩師の会話である。母校の進学校入りを評価する元校長に、戦後教育に問題を感じる先生方が、戦中の教育は学級の底辺にいる生徒を大切にしていたと語っていた。

 この会話から、戦後教育が官僚主導の継承と共に競争原理を導入して、受験教育・学級崩壊・イジメや体罰を生み出したと捉えたい。

 また戦前は、「長男の甚六」のイエ家族が農村を支え、二三男が立身出世を求めて都市に出た。だが戦後は、成長神話が色褪せ、農村が不耕作地・鳥獣害と限界集落を、地方都市がシャッター街を抱えて、社会の劣化と衰退が進んでいる。

 それを集約するのが、少子・高齢化・人口減少だ。消費増税やアベノミクスで、日本の未来に道は開けない。国のかたちー経済・社会・政治の仕組みを変革する基軸が、下支えの理念なのである。こうした三位一体の枠組みを、どう変革するのか。「国のかたち」のモデル・チェンジを提示しよう。